プレスリリース

2020年12月4日 11時30分

ウーマンウェルネス研究会 supported by Kao

感染症・のどの不調を引き起こす 冬の「口呼吸リスク」 6割超が対策していない「睡眠中の乾燥」が落とし穴

健康

監修:帝京大学ちば総合医療センター 耳鼻咽喉科 鈴木 雅明先生

女性の健康力向上を通した社会の活性化への貢献を目指す『ウーマンウェルネス研究会supported by Kao』(代表:対馬ルリ子/産婦人科医)では、この冬特に気になる「のどや鼻の不調」について、首都圏在住526人(20代~60代男女)を対象に意識調査を実施しました。

◆就寝時の口呼吸を自覚している人は約6割 昨年から1割増
冷たく乾燥した空気を直接口の中に吸い込んでしまう「口呼吸」は、「鼻呼吸」と比べ、のどを痛める原因になり、風邪やインフルエンザなどの感染症、睡眠不全など、様々な健康問題を引き起こします。

【グラフ1:就寝時に口呼吸になっているか(n=526)】

調査では、60%が就寝時の口呼吸を自覚しており、昨年に比べて口呼吸自覚者が13%増加していました (グラフ1)。寝ている間に口呼吸になっているサインの一つ「起床時に口が乾燥している」と感じている人は74%にのぼり、自覚がなくても口呼吸をしている人はさらに多いと推測されます(グラフ2)。

【グラフ2:起床時に口の中が乾燥しているか (n=526)】


◆就寝時に口呼吸になっている人ほど風邪を引きやすいと感じている
さらに、就寝時に口呼吸を自覚している人ほど風邪を引きやすいと感じていることが明らかとなりました(グラフ3)。

【グラフ3:就寝時の口呼吸と風邪の引きやすさ(n=464)】


◆日中はマスクで乾燥対策ができているものの、就寝時の乾燥に対しては無防備
この冬は、外出時に93%の人がマスクを着用しています(グラフ4)。マスクはのど鼻の乾燥を防ぐため、日中は結果的に乾燥対策ができているものの、就寝時には62%もの人が全く乾燥対策を行っておらず(グラフ5)、夜間は乾燥に対して無防備になっている状況が明らかになりました。

【グラフ4:外出時にマスクを着けているか】【グラフ5:就寝時に乾燥対策を行っているか】(n=526)

こうした結果を踏まえ、口呼吸のリスクについて、国内トップレベルの研究実績を持つ帝京大学ちば総合医療センター耳鼻咽喉の鈴木雅明先生にお話を伺いました。

◆風邪・インフルエンザなどの感染症や睡眠不調を引き起こす口呼吸
外出が少なくなり、人目を意識して表情をつくる機会が減ると、口もとの筋肉の緊張が緩みがちになり、さらに口呼吸につながりやすいと考えられます。また、今年は新型コロナウイルス流行のせいか、例年よりも「のどの不安」を感じて来院する患者さんが増えています。特に冬は、冷たく乾燥した空気の影響で鼻づまりになりやすく、のどを痛めやすいため、注意が必要です。

本来、人の呼吸は鼻呼吸ですが、乾燥や低温、花粉などの環境ストレスによって鼻がつまると口呼吸になってしまいます。口呼吸をすると、異物やウイルス、細菌などが鼻の粘膜で除去されず直接体内に入るため、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかる危険性が高くなります。感染症全般の予防として、口ではなく、鼻で呼吸することはとても重要です。

◆自分でコントロールできない就寝時は、最も口呼吸になりやすいタイミング
眠っている間は筋肉がゆるみ、意識して口を閉じることができないため、どんな人でも口呼吸になりやすくなります。自覚がなくても、「朝起きた時に口が乾いている」「いびきをかいている」などの兆候があれば、寝ている間に口呼吸になっているサインです。夜間は鼻炎などアレルギー性の症状も悪化しやすくなるため、鼻づまりが起こりやすい時間帯でもあります。また、口呼吸によりいびきをかいたり呼吸が途切れたりすると、脳から「呼吸に異常が起こっている」という信号が出て心身が緊張し、睡眠が阻害されてしまいます。

<かくれ口呼吸チェックリスト>
寝ている間の呼吸は意識できないため、自分では気づきにくいものです。
以下の項目に当てはまる方は、自覚がなくても就寝時に口呼吸になっている可能性があります。
――――――――――――――――――――――――
1. 口の中が乾きやすい
2. 集中している時、無意識に口が開いている
3. 唇が荒れている・唇が乾いている
4. 鼻づまりがある
5. いびきをかく
6. 起床時に口の中が乾燥している
7. 起床時にのどが痛い
8. 起床時に口臭がある
9. 寝ている間によだれが出る
――――――――――――――――――――――――

<対策>就寝時にのど・鼻を加温・加湿、感染症を予防する
就寝時にのど・鼻を加温・加湿して、口呼吸リスクを防ぎましょう。鼻通りがよくなり、睡眠の質が向上します。鼻の中の線毛運動も活発化するため、風邪やインフルエンザの予防効果も期待できます。

1.就寝時にのど・鼻を蒸気で温める
鼻を温めながら加湿することで、スムーズに鼻で息を吸えるようになり、口呼吸を防ぐことができます。口呼吸を防ぐことで、睡眠の質が高まり、のどの乾燥も防ぐことができます。就寝時に蒸しタオルを鼻の上に置き、温めるのがおすすめです。より手軽な対策としては、マスクを着けて眠るのもよいでしょう。加湿機能がついたマスクを使うとさらに効果的です。


2.部屋全体の加湿
空気の乾燥を防ぐため、部屋全体を加湿して湿度を上げましょう。最近では、ウイルスやカビ菌などの有害物質や花粉等アレルギーを引き起こす物質を抑制できる加湿空気清浄機もあるため、上手に活用するのも良いでしょう。

3.片方の鼻で交互に鼻呼吸
人差し指で右の鼻を押さえ、左の鼻から深く息を吸ってゆっくりと吐きます。次に左の鼻を押さえ、同様に右の鼻で深呼吸します。左右交互に5セット行いましょう。


◆のど・鼻の加湿・加温による効果
温めた蒸気を吸入する試験用のシートを鼻から口にかけて装着し、40℃で加温・加湿したところ、加温・加湿をしていない場合に比べて鼻からの呼吸量が有意に増加しました(グラフ6)。

【グラフ6:蒸気吸入により鼻からの呼吸量が増加】

被験者:男性37名 20℃ 10%RH(乾燥環境)1加温加湿あり 2加温加湿なし データ提供:花王

また、就寝前に加湿・加温を行った場合、睡眠不全の症状が有意に改善しました(グラフ7) 。睡眠の質の指標であるPSQI*において、6以上は睡眠に問題があると言われていますが、加湿加温を行っていない場合の平均値は6.5であったのに対し、加湿加温をおこなった場合は5.7にまで下がりました。加温・加湿により鼻通りが改善し、鼻からの深呼吸に変化したため、スムーズに呼吸できるようになり、眠りの質が改善したと推測できます。

【グラフ7:蒸気吸入により睡眠の質が改善】

被験者:20~50代男女35名 データ提供:花王
*PSQI: 睡眠時間や睡眠の質などについて尋ねる「ピッツバーグ睡眠調査票」に基づき、被験者が自覚する睡眠不全の度合いを示す指標。数値が高いほど睡眠に問題があると考えられる。

監修 : 鈴木 雅明 (すずき まさあき) 

【現職】
帝京大学ちば総合医療センター 耳鼻咽喉科 教授
日本耳鼻咽喉科学会 専門医、指導医、日本睡眠学会 評議員・認定医、日本気管食道科学会 専門医、日本耳科学会 手術指導医

【経歴】
1989年 東北大学耳鼻咽喉科 入局
1994年 米国ワシントン大学耳鼻咽喉科 留学
2002年 東北大学耳鼻咽喉科 院内講師
2004年 帝京大学耳鼻咽喉科 講師
2010年 同 准教授
2012年 帝京大学ちば総合医療センター耳鼻咽喉科 教授

<調査概要>

■調査方法 : インターネット調査

■調査期間 : 2020年11月4日~11月10日
■調査対象 : 首都圏の20歳~69歳の男女526名

■調査内容 : のどや鼻の不調に関する意識調査

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●ウーマンウェルネス研究会supported by Kaoとは
『ウーマンウェルネス研究会supported by Kao』は、現代女性のライフステージごとに異なる様々な心身の不調を解消し、女性が健康で豊かな生活を送り充実した人生を実現することを願って、医師や専門家、企業が集い2014年9月1日に発足いたしました。女性のウェルネス実現のために、公式サイト「ウェルラボ」(http://www.well-lab.jp/)やイベントなどを通じて、女性が知っておきたい健康の基礎知識や不調への対応策など、心身の健康に役立つ情報を発信します。

●ウーマンウェルネス研究会の概要
・発足日:2014年9月1日
・医師・専門家:(50音順)(敬称略) 
 対馬 ルリ子 (産婦人科医、対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座院長)
 小島 美和子 (管理栄養士、有限会社クオリティライフサービス 代表取締役)
 川嶋 朗 (統合医療医、東京有明医療大学 保健医療学部鍼灸学科 教授)
 中村 格子 (整形外科医、スポーツドクター、医療法人社団BODHI理事長)
 福田 千晶 (産業医、内科医・リハビリ医、人間ドック専門医、健康科学アドバイザー)
 渡邉 賀子 (漢方専門医、麻布ミューズクリニック名誉院長)
・協賛: 花王株式会社、パナソニック株式会社  (あいうえお順)
・Webサイト: 『ウェルラボ』:http://www.well-lab.jp/ (2014年9月11日OPEN)
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